第2章 傷負う君も愛す
蝶屋敷で胡蝶に手当てをされる
「よかったですね!毒を持っている鬼ではなくて」
にこりと微笑む胡蝶
確かに噛まれただけで毒など特殊な攻撃をされたわけではなかった
しかしその傷は深く治癒するまで時間がかかるとのことだった
暫く蝶屋敷で身を休めることになる
「杏寿郎はもう帰っても大丈夫よ」
ずっと側にいてくれる杏寿郎にそう言った
「俺がほのかの側にいたいだけだ!」
にこりと微笑む杏寿郎
その言葉にほのかも胸が鳴る
「こんな傷だらけの体じゃ嫁の貰い手もないかもね!」
話を逸らすようにほのかは笑った
「安心するといい!その時は俺が嫁に迎えるぞ!」
「...え?」
「ん?」
杏寿郎の言葉にほのかは一瞬時が止まった
「そんな杏寿郎にはもっと良いお嫁さんが来てくれるわよ」
「俺はどんな女性よりもほのかが良いと思っているぞ」
真っ直ぐに目を合わせてくる杏寿郎から視線を逸らせられない
「そ、そんな冗談よしてよ」
必死に探した言葉
「冗談ではない」
「っ、やめてよ」
「やめない」
顔を背けるが杏寿郎の手によって阻止される
そっと頬に触れる大きな手は温かい
「俺は本気だ。俺の嫁になってくれないか?」
杏寿郎の真剣な表情にほのかは眉をハの字にさせる
「こ、困るわ...急にそんなこと言われても」
「急じゃないぞ。昔から...出会った頃からそう思っていた」
「私は...幼馴染のように...」
添えられた顔はそのままに目線だけ逸らせる
「ほのかが俺のことをそう思っていたことは知っている。だからこそ向き合ってほしい」
言葉が見つからない
杏寿郎は続ける
「今回怪我をさせてしまったのは俺の責任だ。今回の傷も今まで負った傷も何もかもを俺は受け止めて愛すよ」
杏寿郎の言葉に涙がたまる
「そ、そんなこと言わないで...すぐには、答え、られない」
「わかってる。俺の気持ちと向き合ってくれればいい」
添えられた手は頭へと移動する
そしてぽんぽんと撫でられ抱きしめられる
子供をあやすように宥められる
ほのかは杏寿郎の胸で涙した