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紅玉の瞳

第1章 満月


「あぁ、悪りぃな」

不死川はそれを受け取った

用事は済んでしまった
後は帰るだけだと不死川は足を進めようとするがほのかがそれを引き止める

「もう少しぶらっとしませんか?」
「はぁ?」
「折角だし」

ほのかの紅い瞳がキラキラと光る

「仕方ねぇな」

杏寿郎にはすぐに帰ると伝えたがそんな目をされると断れなかった

「甘味処でも行きましょうよ」

不死川の腕を引き甘い香りが漂う方へと足を運ぶ

「不死川さんはおはぎでいいですか?」
「あぁ」
「じゃ私はみたらし団子にしよぉ」

にこにことする表情はどこか幼く感じた

注文した物を外の長椅子に座り待っていると気持ちの良い風が吹く
ほのかの癖っ毛を揺らし頬にかかる
不死川は指でその髪を掬う

「あっ、すいません」
「あー...」

つい手が伸びたことに言葉を濁す

ほのかの髪は想像よりも柔らかく少し触れた頬は滑らかだった

杏寿郎は四六時中こんな好いた女が屋敷にいるのかと思うと気の毒に思えた

そんな事を考えていると団子が運ばれてくる

「美味しそうですね」

柔らかく笑うほのか
みたらし団子を一つ口に頬張る
膨らむ頬
緩む口元
全てが可愛らしく思えた

「食べないんですか?」

不死川の視線に気付き首を傾げる

「美味そうに食うな」
「え!?やだ恥ずかしい!」

食べている所を見られたと頬に手を寄せる

「もぉ!見てないで食べてくださいよ!」
「わかったよ」

不死川もおはぎを頬張り満足そうな表情だ

腹も満たされゆっくりとした時を過ごした

「今夜任務があるんです」

ふと言葉を発した

「こんな幸せな時を過ごしていても鬼はやってくるんですね」

ほのかの眉は下がり遠くを見つめる

「早く終わらせたいですね」
「あぁ」

幸せな時を、静かな夜を過ごせる世の中に
そうしたいと思う

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