第2章 対敵(ヴィラン)訓練
「心操!なんだかんだ私と初めて戦うよね!」
俺がそう考えていると幻想が話しかける。
これはチャンスだと俺は話に乗る
「そうだな!お前俺の事知ってたのか?!」
しかし俺が話しかけても幻想は俺の問いには答えない。
こいつほんとに……!!
ただ俺の視線を自分に向ける為だけに話しかけてんのか!!
「……ほんとつえーな」
そう俺が呟くのと同時に幻想は俺との距離を一気に詰める。
やばいッ…こんな近接戦になってはふとしたことで目が合いかねない!
そう思い俺は目をつむった。
音と…気配で何とか…何とか捕縛か、距離を置かないと…
すると伸ばした右手に幻想の身体が当たる。
それと同時に耳を劈くような悲鳴が聞こえた。
「きゃあーーーーーー!!!」
その叫び声に俺は思わず目を開けてしまった。
明るくなった視界には、幻想の瞳が映る。
透き通るような瞳は、見とれてしまうほど綺麗だ。
「やっと見てくれた」
そう言って幻想は笑った。
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記憶が脳裏に映し出されるような感覚に、俺はしばらくの間浸っていた。
ふわふわとした、体験した事のない感覚だった。
ハッとすると、自分の身体には確保テープが巻かれていた。
ああ、幻想の個性か。
自分の状況を理解するとその感覚は溶けるように消えていった。
あの叫び声…あれは俺の目を開けさせるための罠だったんだな。
「負けたのか…」
そう言葉にして自覚すると、腹の底から悔しさが込み上げてきた。
何もできなかった…
学んできたこと何も生かせなかった。
そう考えていると終了の合図が鳴り、幻想は俺のテープを外す。
その姿を見て俺の胸の内には劣等感が渦を巻いていた
「ヒーロー科って、やっぱレベルが違うよな」
そう自嘲気味に話すと、幻想は俺の顔を見た。
真っ直ぐ俺を見つめる目は心まで見ているようで何だかむず痒い
すると幻想は少し間を開けてから
「心操は私の目を見て話してくれるんだね」
そう言って微かに笑った。
想像していた言葉とは違い俺は唖然としてしまう
そんな俺を見て幻想は続けて
「心操は勘違いしてるよ、一対一の戦闘で一番不利なのは君だけじゃない」
そう言った。
真剣な顔で言われたそれは、その時は意味が分からなかった。