第21章 大切な存在
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「そんなことが…なんで言わなかったんだ…」
相澤先生は幻想の一連の事情を知ると、かなり怒った顔をしていた。
「すみません…」
「いや、説教は後だ。取り敢えず幻想を探す。」
そう言って相澤先生は俺に帰るように促す。
俺はそれを聞いて返事ができなかった。
幻想はきっと今あいつに捕まっているんだ
苦しんでるかもしれない、泣いてるかもしれない
怯えている幻想の顔を思い出すと、とても待っていることはできない。
そんな俺を見て相澤先生は大きなため息をついた。
「…お前、どうせ探しに行くんだろ」
そう言われ俺が頷くと
「じゃあせめて何かあったら連絡はしてくれ」
そう言い残して行ってしまった。
取り残された俺と麗日は幻想に電話をかけるも繋がらない。
最悪の状況を想像すると俺の身体は強張っていく
「麗日は寮戻りなよ、連れ去ったやつの個性が分からない以上危険だから」
俺がそう言うと麗日は首を横に振った。
「そんなの無理や…クラスの皆だって探してるし、叶ちゃんは私たちの友達やもん…」
そう話す麗日の目には涙が溢れていた。
それを見て身が引き締まる。
ああ、そうだ。
あいつはみんなにとって大事な存在なんだ。
「じゃあみんなで手分けして探そう」
そう言って俺と麗日はA組の生徒に連絡を取り始めた。