第21章 大切な存在
【心操人使side】
放課後
相澤先生との特訓が終わり一息ついていた。
ふと昨日の幻想の言葉を思い出す。
『 …私も誰にでもじゃない… 』
思わず握ってしまった手は驚くほど小さく、華奢だった。
誰にでもじゃない…ってどういう意味だ
「おい心操、もう時間ださっさと帰れよ」
ぼうっとしている俺に相澤先生は言う。
「あ、相澤先生少し待ってもらえませんか」
そう言うと相澤先生は「なんだ」と言った。
今日は幻想と一緒に相澤先生に不審者の事を報告する約束をしていた。
だけどおかしい…
特訓の終わる頃には顔を出すと言っていたのに。
幻想の姿はどこにもなかった。
幻想に連絡しようと思い携帯電話を取り出すと、遠くから声が聞こえた。
「相澤先生ッッ!!!ここにいた!!」
血相を変えて走ってくる麗日の様子に、嫌な予感がする。
「どうした麗日、何かあったのか?」
相澤先生がそう聞くと、麗日は息を切らしながら話し始める。
「叶ちゃんが帰ってきてなくて……みんなで探してたんですけど、さっき他のクラスの子が男の人に連れていかれるの見たって教えてくれて…」
それを聞いて全身の血液が抜かれたような感覚になった。
「幻想が…連れていかれた…?」
頭が真っ白になった。
相澤先生の顔を見ると口を開いたまま呆然としている。
「相澤先生…どうしたら…」
麗日がそう言うと相澤先生は眉間にしわを寄せ考えていた。
「取り敢えず生徒は全員寮に入ってろ、…教師に招集かけて幻想を探す」
そう指示を出す相澤先生はかなり焦っている様子だった。
「心操、お前も寮に戻ってろ」
相澤先生は俺にそう言って背を向けた。
幻想が連れていかれた…
この状況、今まで幻想が見ていた不審者に連れていかれたと考えてもおかしくない
「相澤先生まってください!」
俺が呼び止めると相澤先生は「なんだ!」と焦っていた。
「幻想…あいつは……」
俺は幻想との約束を破って相澤先生にあの事を話した。