第20章 誘拐
【幻想叶side】
部屋に戻った私は今日の事を思い出していた。
「あいつ…何が目的なんだろう」
今まで見ているだけで接触してこなかったあいつが
どういうわけか今日は私たちの前に堂々と姿を現した。
あの気味の悪い目…
私の部屋に現れたあいつと過去に本屋で会ったあいつはきっと同一人物なんだ…
そう確信すると鳥肌が立った。
全身に力が入っていく中、ふと心操の言葉を思い出す。
『俺はもうお前が一人で全部抱え込むのは嫌なんだよ』
一人で抱え込む…
そんなこと考えたことなかった。
ベッドに横になり右手が目に映る。
心操の手、すごく大きかった。
私を抱きしめて必死になって走るあの顔を
私を思って怒ってくれるあの姿を
握ってくれた大きな手を
ひとつひとつ思い出すと強張った身体は緩んでいくようだった。
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放課後、窓の外はみるみるうちに夕焼けに染まっていく。
「お前帰らないのか?」
「あ、いや……帰るよ」
轟君にそう言われ私は立ち上がる。
授業が終わりみんなが帰る中、私は教室に残っていた。
「あー…行きたくないなあ」
今日はこの後心操と相澤先生のところに行く約束をしていた。
きっと相澤先生めちゃくちゃ怒るだろうな
過去に隠し事をして相澤先生に怒られたのを思い出した。
だけど、先生たちに伝えれば何とかしてくれるんだろうな。
もうあんなに怖い思いしなくていいのか…
そう思うと強張った身体が緩んでいく
「心操は今日20時くらいに終わるって言ってたな…」
心操の特訓が終わるまでまだ時間がある。
私は一度寮に戻ることにした。
プルルルル……
学校から寮まで歩いていると携帯が鳴る。