第17章 淡く危うく
【心操人使side】
「なんかあいつ最近すげえ気合入ってるよな」
上鳴の視線の先には、目の色を変えて戦闘訓練に励む幻想がいた。
『心操は他の子にもこんなことするの?』
そんな妙な事を言われてから二週間、幻想は目に見えて成長していた。
個性の使い方もうまくなり、体の使い方もうまくなっていた。
「すげえけど、幻想…なんか演習でも“一人で戦う”って感じが強くなったよな」
そう上鳴が呟き、俺は幻想の方向を見る。
確かに幻想は以前より負担を背負い込むような戦闘スタイルになっていた。
それが効率的ではないことくらいあいつなら分かっているだろうに。
何かあったのか?
そう考えても何も話してくれない幻想に
俺はどうするべきかわからなかった。
毎週恒例の土曜日の外出では、あいつはいつものように他愛もない話をして、俺と冗談を言い合う。
ただ、時折浮かない顔をするようになった。
それは幻想が何かに怯えたときに見せる顔に似ていた。
「相澤先生!!叶ちゃんが!!」
「なんだ!!」
その声にハッとすると、視線の先には幻想の脚が負傷している姿があった。
服には大量の血が滲み、大怪我しているように見えた。
「幻想!!」
思わずそう叫ぶとクラスのやつらが俺を見た。
ああ、みんなは俺と幻想の事を知らないから…
「こりゃあ折れてるな」
相澤先生がそう言って幻想を担ぐ
幻想はとてもつらそうな顔をしていた。
その顔を見ていてもたってもいられなくなった。
「相澤先生!……俺も…付き添っていいですか…」
保健室に急ぐ相澤先生にそう言うと相澤先生は怪訝な顔をする。
「いやなんでだよ、必要ないだろ」
「そうですけど…お願いします」
俺が必死に訴えると相澤先生は怪訝な顔のまま前を向き
「勝手にしろ」
そう言った。