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嘘つきのヒーロー

第16章 恋と訪問者



そっけないのに、いつもこうやって送ってくれる。
私が安全に帰れるように

何でそんなに優しくしてくれるの?


こんなことしてくれるのは、心操が優しいからなのかな
皆にこういうことするのかな。




そんなことを考えて自分の部屋のドアを開けた。

なんだか疲れてしまってベッドに倒れこむ。


「次は…また来週か」


そう呟くと自然と心操の顔が浮かぶ。


はやく…土曜日にならないかな



そんなことを考えふと開かれたままのカーテンに気付く。

「あ、今朝出かけたときのままだった」



窓に近づきカーテンに触れようとするとあることに気付いた。





暗闇の中にうっすらと浮かび上がる気味の悪い目、
窓の外に立って私をじっと見ている。

窓に反射して、恐怖に染まった私の顔が映し出される。




「なん…で」



ここ最近、現れてなかったのに。
なんで?

どうして?




怖い

怖い怖い怖い怖い。



恐怖でその場に座り込むと、
そいつは私を見て笑った。


誰か…誰か呼ばなきゃ


心操、心操に電話…



震える手で携帯を取り出そうとすると、窓越しにそいつが何か喋っているのが分かった。


「ああ…かわいいねえ」



それを聞いた瞬間、背筋が凍るのを感じた。



何も考えられない。怖い。



しかしそいつは一分としないうちにその場を離れどこかへ行ってしまった。



どうやって、ここまで来たの?
どうして私に接触するの?
どうして今日は話しかけてきたの?


色々な事を考えるほど、涙が溢れてくる。



「…どうしたらいいの?」


ふと握りしめた携帯に視線が移る。


『…幻想、また何かあったら連絡して』


心操…心操なら、助けてくれる。
そう思い連絡先を開いて指が止まる。





私は未だに無力なのか。
あの時みたいに、自分一人じゃ何もできないのか。


誰も救えない。
自分の問題も解決できない。



こんな個性…役に立たないの?





違う。そんなことない。
私はこんな個性でもヒーローになるためにここまで来た。



私の個性で理不尽な悲劇から人を救おうと。


“自分一人で誰かを救うヒーローになるんだ”










身体に力が入っていく、
自分の決意に締め付けられ、私は誰にもこのことを話すことはできなかった。
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