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嘘つきのヒーロー

第16章 恋と訪問者


【幻想叶side】

「なあ、なんで今日は全然喋んないの?」

「えっ…そ、そんなことないよ」


あんなことを考えてしまってから、私は心操に挙動不審になっていた。


土曜日、いつもは楽しい帰り道が長く感じる。


別に…好きなんかじゃない。
睡眠時間を削ってまで心操にノートを作ったのは頑張って欲しかったから。

心操の行動が気になるのは、同級生として参考になるから。


だから…だから別に好きなんて




「おい!」

考え事をしていると、心操の声と共に身体を引き寄せられる。

「えっ…なに?!」

突然のことに心操の顔を見ると、心操は車道を見ていた。


「ふらふらしすぎ、車道側歩かないで」

そう言うと心操は私の肩に触れ、私を内側へと促した。


「あ…ありがとう」

「別に」

動揺しながらもそう言うと心操ぶっきらぼうにそう答えた。

なんだか触れられた肩がそわそわする。



心操は優しい。きっとそれは心操の本質で、素なんだろう。

だけど、他の女の子にもこんなことするのかな。

それは…何だか嫌だな。




「心操は他の子にもこんなことするの?」

思わず口から出たそれに、心操は驚いた顔をした。



「え…なに、俺なんか変な事した?」

「あ、いや、心操ってすごく優しいから…誰にでもそうなのかな…って」

そう言うと心操は不思議そうな顔をする。


「するだろ、ヒーローなんだから」

「そ…そうだよね」


なんだかそれを聞いて残念に思ってしまった。
落胆する私を見て、心操は動揺しているようだった。


「え…俺なんか変なこと言った?…幻想だって皆に優しいだろ」


そうだ、当たり前だ…私たちはヒーローなんだから
そう言われ何だか自分が子どもで恥ずかしくなってしまう。


「うんごめん、気にしないで」

そう言うと心操はバツが悪そうに頭を掻いた。



しばらく歩いて学校の門が見える。
寮に着くと心操は私を女子部屋の入り口まで送ってくれる


「じゃあ、また来週ね」

そう言って私が階段を上がるのを見送った。
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