第15章 緩やかな時間Ⅱ
「まあ…ただのお節介だが、お前は心操と付き合ってるのか?」
そう聞かれてぎょっとしてしまう。
「先生まで…何でそんなこと聞くんですか、付き合ってないですよ」
私がそう言うと先生は頭を掻いた。
「お前つい最近まで調子悪かっただろ、それなのに突然調子が戻った。心操と幻想は一緒に外出許可出してるから、何かあったのかと思ってな」
ああ、心配してくれてたのか。
でも最近調子が戻ったのは不審者が出ないからなんだけどな。
「ちょっと…事情があって一緒にいるだけです、何もないですよ」
そう言うと先生は真剣な顔で私を見つめる。
相澤先生の目は心操とは違う雰囲気があって
なんだかいつもむず痒い。
「お前は家族の一件があったからなのか、よく一人で背負い込むからな。それは必ずしもヒーローとして正しい選択とは言えないぞ」
「…はい」
「一年の頃みたく、“あんなこと”にならないように気をつけろよ」
相澤先生はそう言うと「じゃあ帰れ」と私に背を向けた。
そうだ…もうあんなことにならないようにしないと。
はやく強くならないといけないんだ…
そう考え、あることが頭に浮かんだ。
「あっ、先生」
声をかけると先生は振り返る。
「なんだ」
「心操…心操ってどんな感じなんですか」
それを聞いて相澤先生は少し驚いた顔をした。
「お前ら揃いも揃って同じことを…お互い本人に聞けよ」
「…え?」
「…ったく、…心操はよく頑張ってるよ、あいつはお前に似てる…良くも悪くもな」
「それってどういう…」
「いいから早く帰れ」
相澤先生はそう言うと私の話も聞かずに教室を出て行ってしまった。
私と心操は個性のハンデの大きさは似ているけど…“良くも悪くも”?
他に何が似てるんだろう。
心操の方が身体能力は高いし、ヒーローに対する思いも強い。
心操の方が努力家だし、優しいし…
そこまで考えてハッとした。
何考えてるの私は、これじゃまるで…
私が心操のこと好きみたいじゃない。