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嘘つきのヒーロー

第14章 緩やかな時間



高級チョコに衝撃を受けている幻想を想像すると
なんだか笑えてくる。


「よかったな」

そう言って俺が笑うと、
照れながらも幻想は笑ってくれた。


ああ、なんだか気を使われたな。
そう感じたが、悪い気はしなかった。






幻想の実家と言われるそこは随分古く、
実際には幻想の祖母の家のようだった。

週に一回行っているというだけに、1時間ほどで滞在は終え
俺はその間近くのファミレスに入って時間を潰していた。



「お待たせ、ありがとう」

家から出てきた幻想は俺にお礼を言うと、俺に何かを手渡してきた。



「なにこれ?」

掌に置かれたのは金色の包み紙の小さなお菓子。
いかにも高級そうな雰囲気だった。


幻想の顔を見るとそのお菓子を見て悔しそうな顔をしている。


「それが…私を騙してきたチョコ…」

「ははっなんだよそれ」


あまりの顔に俺は笑ってしまった。

はっとして幻想の顔を見ると幻想も楽しそうに笑っていた。



「確かにこれは騙されるな」

そう言うと幻想は「でしょ」と誇らしげな顔をする。


なんだか小さな子どもみたいで可愛いなと思ってしまった。



それから帰り道、

穏やかに話す幻想に呑み込まれ、俺は本来の目的をつい忘れてしまう。
しかし、何回か辺りを確認してもそれらしい人間はいなかった。






そうして、俺と幻想の関係が続いていく中
俺は幻想の事を少しずつ知っていった


チョコレートと甘いものが好きなこと
家の中にいるより外にいる方が好きなこと
料理は苦手で、虫も苦手なこと

拗ねると少し口をとがらせること
家族の話になりそうなときは笑って誤魔化すこと

普段は意外とおっとりとしていて、ゆったりと優しく話す事





色んな事を知ってしまうと最初の幻想への印象は覆され
この時間がなんだかとても大事なものになってしまっていた。
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