第12章 見た目で悪は分からない
ハッとして私は携帯を拾った。
携帯の画面が割れていないのを確認して、顔を上げた。
そして一瞬思考が止まる。
視線の先には物陰に隠れて私を見る誰かがいた。
あの目、私を観察するような
部屋で見たあいつと同じ目だ。
え、誰?
こんな人気のない道でどうしてそんなところにいるの?
私を…見てるの?
そう理解した瞬間、全身の血の気が引いていく
怖い、怖い、怖い怖い怖い。
取り敢えず…取り敢えず帰らなきゃ
震える足で私は寮に向かった。
後ろを確認すると、そいつは私と一定の距離を取りながらつけてきているようだった。
「なんで…」
身体が強張るのと同時に上手く歩けなくなってしまう。
どうしよう、歩かなきゃ。
歩かなきゃ帰れないのに
「怖い…」
私は立ち止まってしまった。
どうしよう歩けない。どうしよう。
あいつが追いかけてきたら、私に何かするのかもしれない。
そんなことを考えて立ち止まっていると、後ろから声がした。
「おい、幻想、なにしてんだよ」
振り向くとそこには心操がいた。