第12章 見た目で悪は分からない
【幻想叶side】
毎週土曜日、私は祖母の家に顔を出しに行っていた。
両親が亡くなってから祖母の家に身を寄せた私に、祖母は進学の援助や生活の面倒を見てくれた。
来なくていいよとは言われているけど、年齢を重ねた祖母の事が心配で毎週許可を得て外出をしている。
二時間ほど祖母の家に滞在してから帰り道
私は本屋に向かっていた。
「あれ…新刊まだ出てないのかな」
いつも買っているヒーロー雑誌の新刊が並んでいないようだった。
今日が発売日で楽しみにしてたのにな…
「あ、あの新刊ってまだ出てないんですか?」
「えっこれですか?並んでいるはずですけど」
私が携帯の画面で雑誌の表紙を見せると店員さんはそう言った。
「あれ…?すみません探してみます」
そう言って私が雑誌コーナーに戻ろうとすると肩に誰かの手が触れた。
「その雑誌ならここにありますよ」
振り返ると笑顔の爽やかな男性が私に雑誌を差し出してきた。
「えっ…」
「ああ、すみません話聞こえちゃって…」
申し訳なさそうに笑うその人は良い人そうだった。
「…あ、ありがとうございます」
そう言って私は雑誌を受け取り、ふと顔を上げた。
ドクン。
心臓が大きく鳴る。
目が合ったその人先程の笑顔とは違い目が笑っていない
私の顔をじっと見て、何も言わない。
私の部屋で見たあいつの目に似ていた。
「あ…あの、じゃあ」
何だか言い表せられない恐怖を感じてその場を後にしようとすると
その人は私を見たまま何も言わなかった。
__________
「あの人…なんだったんだろう」
本を買って寮に帰る途中、本屋でのことを考えていた。
何だか妙な人だった
あの目、私を観察しているみたいだった
気持ちの悪い目
なんか…嫌だな。
あの顔を思い出して鳥肌が立っていく
「あっ…!やだ!」
ぼんやりとしていたせいで携帯を地面に落としてしまう。
慌てて携帯電話を拾おうと屈んで、ふと心操の事を思い出した。
『 …幻想、また何かあったら連絡して 』
心操は私に連絡先を教えてくれた。
そう言えば一度も連絡をしてないけど…
心操は私を観察したり、私に怯えるような見方はしない。
心操は私の目を真っ直ぐに見てくれる。
心操は…
「私何考えてるんだろ」