第1章 はじめまして
【幻想叶side】
はじめて心操を見たのは一年の頃の体育祭。
『洗脳』という個性で緑谷と戦う姿は今も鮮やかに記憶に残っている。
そのとき見た心操は決して個性を上手く使っているわけじゃなかった。
子どもが乱暴に個性をぶつけてるみたいだと思った。
だけど、その姿にどうしようもなく胸が締め付けられた
ヒーロー科に落ちて普通科に在籍
並大抵の人間ならきっとそこで諦める。
ヒーロー科調子乗ってるよな、そんな陰口叩きながら、
ヒーロー科の生徒を横目で見て、ただ羨みながら
笑って過ごすのだろう。
だけど心操はその気持ちを捨てなかった。
「どうしてもなりたい」その気持ちを抱えるのはとても苦しい。
私は良く知っていた。
彼は重く苦しいそれを抱えて、きっとあの場に立っていた。
「洗脳」きっとヒーロー向きではないんだろう。
それは私も同じで、彼の痛みが自分の事のように理解できた。
「相澤先生!心操…心操人使くんをヒーロー科に入れてください!!」
気づいた頃には相澤先生に直談判をして、彼をどうにかヒーロー科にと訴えていた。
「そんな簡単に入れるか」そう言ってあの時は跳ね返されてしまったけど、しばらくして先生は心操を密かにトレーニングしているようだった。
今日は心操がヒーロー科に入る初日
相澤先生の横で改めて自己紹介する心操は
近くで見ると思ったより大きかった
内心ドキドキしながらそれを見ていると相澤先生は私の方を指さして言う。
「席は幻想の隣な」
「えっ」
そう言われ思わず声が出てしまった。
相澤先生を見ると私の反応を見てにやりと笑う。
それを見て何だかしてやられたみたいで恥ずかしかった。
だけどそれと同時に心操がA組になったのは、相澤先生が色々してくれたからなんだろうと思った。
隣に座った心操に緊張して私は俯いてしまった。
ふと視線を感じて横を見ると心操と目が合う。
その目を見て驚いてしまった。
私の目を真っ直ぐに見る心操の目。
はじめて見た心操の目は鋭くて、少し目つきが悪かった。
だけどやっぱり私を真っ直ぐに見てくれた。
私の個性は『記憶を改ざんする』個性。
目を合わせることで人の記憶を捻じ曲げる個性だ。