第6章 心づく
「幻想はなんで俺に良くしてくれるの?」
思わずそう聞くと、幻想は少し困ったような顔をした。
「別に…大した理由はないけど…」
そう言って幻想は少しの間考えていた。
ふと顔を上げて、俺の顔を見る。
「心操が頑張ってると、私も頑張れるからかな」
そう照れながら笑う、細められた目は
いつもよりもずっと優しく見えた。
俺が頑張ると、幻想が頑張れる?
なんでだ?
しばらく何も言わないでいると
幻想は「じゃあ、おやすみ」と部屋に入ろうとした。
それを見て思わず腕を掴み引き留めてしまう。
幻想は驚いて俺の顔を見る。
「あ…、ノートありがとう。大事にするよ」
とっさにそう言うと幻想は嬉しそうな顔をした。
「あと、俺幻想に負けないように頑張るよ」
俺がそう言うと幻想は一瞬驚いた顔をして、すぐ笑顔になった。
「うん、私も」
そう言って幻想は部屋に戻っていった。
自分の部屋に帰る途中、手には柔らかく華奢な体の感覚が残っていた。
あいつあんなに細いんだな。
俺が頑張ると、幻想も頑張れる…
俺はその言葉を思い出して、
胸が微かに熱くなるのを感じた。