第36章 約束
その目を見てふと、始めて会った時の事を思い出した。
始めて会った時から幻想はずっと俺を真っ直ぐに見ていた。
あのノート、読めば読むほどお前の努力が分かったよ。
幻想が意外と笑うやつだって分かった時、何だかとても安心した
お前が連れ去られたとき、信じられないほど動揺したし
俺のこと「大切な人」だと言ってくれたこと、嬉しかったんだ
ひとつひとつ思い出す度に、何かが溢れ出してくる
「だから、これはただのタッグの誘いなんかじゃなくて…幻想とずっと一緒にいれたらいいなって、不純な気持ちもある」
俺がそう言うと幻想は優しく笑った。
「私も…心操のこと好きだよ」
「え」
「えって…分かってたからそんなこと言ったんじゃないの?」
「いや…確信はなかった」
そう言うと幻想は口を尖らせて「なにそれ」と言った。
俺が幻想の言葉に動揺していると幻想は続けて
「私も心操のこと同級生としても人としても尊敬してる。心操になら私の命を預けてもいいくらい」
「…いやそれは流石に」
「ほんとだよ」
静かな声でそう言われ、幻想の顔を見ると
幻想は今までにない、真剣な顔をしていた。
「心操はいつも私が“こうだ”って決めつけていることを壊してくれる、家族の事もそう、事件の犯人見つけたときもそうだった」
そう言って俺を見て優しく笑い
「だからすごく感謝してるの、助けてくれたり色々…ありがとう」
「そんなこと言ったら俺だって幻想に助けてもらったよ」
俺がそう言うと幻想は「そういえばそうね」と笑っていた。
その顔を無意識に見つめていると
「だけど、プロポーズはちょっと早いかな」
そう言われ、自分で言った言葉を思い出して顔が熱くなっていく。
「ごめん、忘れてくれていいから…」
俺が咄嗟にそう言うと幻想は俺をからかうように言った
「忘れないよ、忘れてあげない」
「おい…」
「だから、その日まで私と付き合って欲しい」
そう言われ一瞬思考が停止した。
今付き合ってって言った?
黙っていると幻想が口を尖らせて言う
「嫌なの?」
「嫌じゃない」
俺が即答すると幻想は嬉しそうに笑っていた。