第36章 約束
【心操人使side】
とんでもない事を言ってしまった。
口を開けたまま固まっている幻想の顔を見てそう思った。
「え…何言ってるか分かってる?」
「…分かってるよ」
俺がそう言うと幻想は動揺しているようだった。
ずっと考えていた。
どうしたら二人でヒーローになれるんだろうって
それと同時に
どうしたら幻想の傍にいられるのかを
「や、やめてよ心操…そういう冗談は心臓に悪いって」
「冗談じゃないんだけど」
そう言うと幻想はまた俺の顔を見て固まってしまった。
幻想は俺が最初にこの提案をした時、「考えさせて」と言って、その後うやむやになっていた。
俺は幻想が本当は俺となんかタッグを組みたくないから話をしないんだろうと思っていたし
例えそうだとしても、お前がヒーローを目指してくれるならいいと思っていた。
だけど最近のお前を見ていて、もしかしてと思ったんだ。
多くの生徒がインターン先の事務所を決める中、人の何倍もスカウトが来ているのにお前は、ずっと事務所を決めないままだった。
もしかしたらお前もちゃんと考えてくれていたのかと思った
だから、俺から誘ってみようと思ったんだ。
そしてそれにはとても不純な気持ちも混ざっていた。
「俺…お前の事好きだよ」
俺がそう言うと幻想は一瞬驚いて、すぐに顔を背けてしまった。
「…からかわないでよ、私なんて全然心操に釣り合わないし、好かれるような理由ないよ」
それを聞いて俺は不思議で仕方なかった。
釣り合わないって言葉を出すなら、俺の方がよっぽどお前に釣り合わない
「俺…幻想の事会ってすぐからすごい奴だと思ってたし、お前のこと尊敬してて…お前がとる行動とかすごく気にしてた」
「そうなんだ…」
「だけど最近気づいたんだ」
俺がそう言うと幻想は不思議そうに俺の顔を見た。
「俺はお前のことただ気になるだけじゃなくて、好きに…なってるんだなって」
そう言うと幻想は俺の目をじっと見つめる
俺の真意を確かめるように、心を見透かすように
その青い目で俺ををじっと見た。