第35章 二人で一緒に
【幻想叶side】
私ばっかり本気にしていた。
心操が言ってくれたことを想像して、もしかしたらできるかもって思ってしまった。
きっと心操は私にヒーローを諦めて欲しくないからあんなこと言ったんだ。
あれは慰めだったんだ。
だから…何も言わないんだ。
そう思うと裏切られたみたいで哀しくて、心がきゅっと狭くなる。
やっぱり、…自分一人で頑張らなきゃ。
そう思うと以前の私のように身体が強張っていくのを感じた。
「あの!幻想さん!」
学校から寮に向かう途中
知らない男の人に声をかけられた。
突然のことに驚いて警戒してしまう
しかし雄英の制服を着ていたのでひとまず安心した。
「あ…はい、…なんですか」
私がそう言うとその人はカバンから何かを出して、私に手渡してきた。
「これ、受け取ってください!!」
そう言われそれを見るとお菓子のようなものがラッピングされていた。
初対面なのにそんなことを言われ戸惑ってしまう。
「あ…ごめんなさい、先生からこういうのは受け取らないように言われてるの」
そう言うとその人は残念そうに肩を落とした。
その様子を見て何だか悪い事をしたみたいで申し訳なく思っていると
「びっくりさせてごめんなさい…だけど僕幻想さんのこと好きで…だから思いを伝えたくて作ってきたんですけど」
「えっ…」
「だから貰ってくれませんか?変なものは入ってないので」
そう言われその袋に視線を落とすが確かに不審な点はなかった。
私のためにわざわざ作ってきてくれたのかな。
受け取ってあげないと可哀そうかな
だけど…相澤先生から人から安易にプレゼントを受け取るなって言われてるしな…
私がどうしようか考えていると、その人は話し出す
「よかったら連絡先も教えてくれませんか?感想とかも聞きたいので!」
「え…ちょっとそれは…」
その人は私の目を見てはいたけど、何を考えているか分からない顔は不気味で怖かった。
「あっ……えっと」
「取り敢えずこれ、受け取ってください!」
そう無理やり袋を押し付けられ戸惑っていると、
突然、背後からその袋を取り上げられてしまう。
「こういうの、やめてもらえませんか」
そう低い声が聞こえて振り向くとそこには心操が立っていた。