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嘘つきのヒーロー

第34章 過ぎていく時間


【幻想叶side】

心操が退院後リハビリを経て学校に復帰すると、徐々に日常が戻っていった。
私自身も自分の個性を強化しながらヒーロー科で今まで通りヒーローを目指していた。


だけど、そんな日常でも大きく変わったことがある。




「あ、あれ幻想叶さんじゃねえ?」

「あっほんとだめっちゃ美人じゃん」

お昼休み、皆でご飯を食べていると通り掛けの人がそう言う。



「叶ちゃんすごい人気ね」

「ほんと、テレビってすごいよね」

「もうほんとやだよ…」

そういうと二人に「どんまい」と慰められてしまった。



テロの犯人を捕まえたあの事件は犯人に余罪も多く大きく注目された。
さらに、それを捕まえた学生ヒーローとして私の名と顔がテレビで大きく報道されたこともあった。


それがあってから私は学校内でも学校外でも注目されるようになってしまった。

今まで注目された経験のない私は、それに対応することにそれなりの体力を消費していた。



「はああー……」

「人気者は大変だな」

「勘弁してよもう…」

私がため息をつくと隣の席の心操が話しかけてくる。

「まあ…でもヒーローって人気商売なところもあるから」

「にしてもだよ…トイレ行くだけで話しかけられるし」

「あー…それはすごいな」

「もう…いつまで続くんだろ…」

私が項垂れていると、そんな私を見て心操は笑った。





あの事件から私と心操は今まで以上に話すようになった。

大きなハンデのある個性同士、それをどうしたらいいのか意見交換をしたり
他愛ない会話をしたりするようになった。


だけど、それだけで…


私は少しだけ今の関係に不満を抱いていた。




「幻想、ちょっと来い」

心操と話していると相澤先生に声をかけられた。

「またお前に事務所からインターンの誘いが来てる」

「また…ですか」


相澤先生に資料を受け取り目を通すと
どこも芸能との関係の深い、華やかな事務所ばかり


それに気づいて私が黙っていると、相澤先生もバツの悪そうな顔をした。
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