第33章 彼女を好きな人
「じゃあ…相澤先生って幻想の事好きなんですか?」
「は?」
俺がそう言うと相澤先生は一瞬驚いて
らしくもなく大声で笑いだした。
その意味が分からず動揺していると相澤先生が言う。
「幻想はただの生徒だよ、何もない、安心しな」
「そう…なんですか?少し距離が近いような気がしたので…」
そう言うと先生は何か思い出したように「あー…」と目を泳がした
「それ、前にマイクに言われたことあるな、気を付けるよ」
それを聞いても納得していない俺を見て
相澤先生は頬を搔いていた。
しばらくお互いに黙っていると相澤先生は話し始める。
「これは他の生徒には言わないで欲しいんだが」
「なんですか?」
「…俺は幻想の両親が死んだ事件の時、ヒーローとして救助に行っていたんだ」
「…事件に…ですか?」
「だからあいつの両親が死んだのも知ってるし、事件の後も幻想が苦しんでたのは情報として流れてくるから、知ってたんだよ」
それを聞いて黙っていると相澤先生は静かな声で言う。
「あいつは俺に個性も似てるし、不安定な部分が大きかったから目をかけていた。…公私混同だな」
そう自嘲する先生はなんだかとても優しい顔をしていた。
そんな顔を無意識に見つめていると相澤先生は言う。
「まあ、お前の方が俺よりもすごいことをしたと思うよ」
「え?」
言葉の意味が分からずに首を傾げると相澤先生は笑う
「今回の事件があってから、あいつはすっきりした顔をしてる。お前が何か言ったんだろ」
そう言われ幻想の言葉を思い出した。
『 大切な人に、一緒にヒーローになろうって言われたの 』
あいつはヒーローになると言ってくれた。
俺の事を大切な人だと言ってくれた。
俺はあいつに何かしてやれたんだろうか。
そんなことを考えていると相澤先生は俺の背中を叩いた。
「心配しなくても、幻想は取らないよ」
俺の顔を見てにやりと笑う顔は
何だかとても嬉しそうだった。