第31章 連れ戻す言葉
【幻想叶side】
教えてもらった路地裏に着くと人だかりができていて、路地の奥では何人かが揉めているようだった。
隙間から覗くとそれが心操だと気づいた。
心操は血まみれで、何人かに踏み潰されていた
状況を理解した瞬間、腹の底から何かが湧き上がってくる。
「こんなの喧嘩じゃない」
そう呟くと隣では野次馬が騒いでいるようだった。
「ねえ、ヒーローか警察呼んだ方がいいんじゃ…」
「ええ…ただの喧嘩でしょ?」
呑気な会話に私は声を荒げてしまう。
「彼は刺されてるんですよ?!早く連絡してください!!」
そう言って飛び出すと後ろから声がした。
「ちょっと女の子一人じゃ危ないよ!!」
私はあなたたちが言う“女の子”じゃない
目の前の心操を放ってなんかいられない。
「…ッ…心操!!」
私が叫ぶとそこにいた男たちは私の方を向いた。
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目に映るのは馬乗りにされてのどにナイフを当てられた心操。
それを見て私は冷静さを失った。
「なんだよお前の彼女かあ?結構かわいいじゃねえか」
そう言ってそいつは私の頭からつま先まで舐めるように見た。
「…その人、心操が…何したんですか」
私がそう聞くとそいつらは顔を見合わせて笑った。
「俺らに喧嘩売ってきたからさあーちょっとお説教してただけだよ」
「ちょっとって…」
心操を見ると左足と右腕が血まみれで、とても軽傷ではなかった
私があまりの状況に言葉をなくしていると
傷ついた心操が小さな声で言った
「こいつら…お前の両親殺した……犯人だ…」
それを聞いて頭を殴られたような衝撃が走る。
あの事件の…犯人…?
あのショッピングセンターでのテロの…
じゃあ…二人はこんなやつらに…?
それを思い出すだけで吐き気がしてきた。
「おっまえうるせえよ!」
そいつらは心操を思い切り蹴った。
それを見て私の心は信じられないほど揺れた