第9章 陰陽師の女の子
「………私なんか…みんなの前になんか出られへんよ。
情けなくて。
全然妖怪から守られへんし…」
「…それで修業?
すごいね」
「えっ」
「だってさ…一人だよ?
進んでこんなとこ来て…修業なんて誰にでも出来ることじゃない。
すごいな、花開院さんは…憧れちゃうよ!」
心からそう思った
花開院さんは少し不思議そうな顔でボクを見てくる
「あ、尊敬するって意味ね!」
少し沈黙が続く
グウゥ〜…
花開院さんのお腹の音が鳴り響いた
「いい、今のはお腹の音やないからね!!」
慌てて弁明する花開院さん
そういえば、確か持ってたはず…
「よかった、一コだけあった。
花開院さんチョコ…大丈夫だよね?」
そう言うと花開院さんは頷いた
「…ありがとう」
チョコを渡し、携帯を取り出す
「みんなに連絡するね、いいよね?」
そういった時だった
「ゆら
やっと見つけたぜ、ゆらぁ…」
突然聞こえた男の人の声
振り向くとそこには二人の男が立っていた
花開院さんの知り合い…?
「お兄ちゃん…?」
お兄さん?
ということは…
「式神の気配を辿ってきたぞ。本家には定期的に連絡を寄越せと言ってあったろう?
ああ、修業か…だがなぜこんなところでしている?
外を歩けばこの街は至るところで妖怪に出会うぜ?」
花開院さんのお兄さんはそう言ってチラリとボクを見る
「…何しに来たん、お兄ちゃん…」
「竜二…」
後ろにいた男が少し前に出る
「…何してるって…ゆらぁ…そりゃあお前…
陰陽師は基本、妖怪退治だろーが。
餓狼!」
花開院さんのお兄さんがそう言うと狼のような式神が襲ってきた
「え…!?」
「お兄ちゃん!?な、何するんやいきなり…」
花開院さんもボクも辛うじて避けたものの…
花開院さんのお兄さんは花開院さんの側まで来ていた
いつの間に…
「ゆら…そいつは…?
そいつは…何だ…?」
「な…何や…?
別に…友達や…?学校のな…」
「本気で言ってるわけじゃないよな?まさか…気付いてないわけじゃないだろーな…?
そいつ…妖怪だぜ」
「え?」
「あきれたぜ、ゆら。
まったくお前は本当ににぶい妹だな…ホラいくぞ!
妖怪に会ったらどうする?
妖怪は絶対"悪"。やることは…わかってるな?」