第7章 四国八十八鬼夜行
リクオはそう言うと力が抜けたようだ
ガクッと首無に体重を預ける
「リクオ様!?」
辛うじて意識を保っている状態だろう
「夜雀ェ…針女…犬ぅ…
はっ…役立たずどもめが…誰もこの玉章について来んとはな…
ボクについてくれば…新しい世界へ行ける。せこい組で…もう地ベタをはいずりまわり、さげすまされることもないのに…
ボクは…選ばれたのだぞ…」
「若、こいつは…もうダメだぜ。」
そう言って出てきたのは猩影だった
「猩影…」
「約束は守らせてもらう!!」
そう言って猩影は玉章に斬りかかった
ガッ
それは、ギリギリで防がれた
『おじいちゃん?』
「ふう〜まにあったわい。」
「おお…玉章…情けない姿になりおって…」
少し遠いところから現れたおじいさん
どうやら妖怪らしい
木の葉が舞うと同時に変化を解いたようだ
正体は大きな狸だったらしい
「たのむ…この…通りだ」
そう言って頭を下げる狸
「い…隠神刑部狸さま…!?
こんなところにまで…」
四国の妖達がザワつく
「こんなヤツでもワシらには…こいつしかおらんのです。
バカな息子…償っても償いきれんだろうが、四国で今後一切大人しくさせますゆえ。
お願いじゃ…何卒、命だけは…それ以外ならどんなけじめもとらせますから…」
「リクオ…どうすんだ、お前が決めろ」
おじいちゃんがそう言った
「一つだけ…条件がある…
犠牲になった者を…絶対に弔ってほしいんだ。」
リクオらしいな
そう思った
「必ず、必ず弔います。」
隠神刑部狸は玉章と妖達を連れ、四国へと帰って行った
『リクオ、お疲れ様』
「姉さん…」
私は少しだけリクオの傷を治す
『さ、後は鴆に頼まないとね』
リクオはじっと私を見ていた
「姉さん、姉さんは本当は…」
「なーにしとんじゃリクオ、早う帰るぞ」
おじいちゃんのその声を合図にリクオと百鬼達が本家へと帰って行く
もちろん、私も一緒に…
「姉さん、最後に"手加減しない"って言ったよね。
本当は…ボクよりずっと…」