第7章 四国八十八鬼夜行
私が屋敷に帰ってから数時間が経った
部屋で刀の手入れをしている時だった
「申し上げます。浮世絵町より、璞町…各方面にて妖怪が暴れているとの情報にございます。」
『そう、リクオはなんて?』
「今、別の者が報告に…」
『直接リクオに聞きに行くわ。』
「承知しました」
報告に来た妖が下がる
私は部屋を出てリクオの元へ向かう
廊下を歩いていると色んな声が聞こえてきた
「アリャ、ただものじゃねーってよぉ。」
「どっから来た。」
「何しに来たんじゃ。」
「んなもん、決まってるべ。
うちらのシマのっとるに決まってんべやよぉー!」
「もう方々で暴れとるらしーしのー!!」
「そ、そ、そんなことされたら…!」
「ワシら追い出されるんじゃね」
「うえぇ、ひいぃ」
小妖怪たちは叫びまくっている
首無や氷麗、毛倡妓が小妖怪たちを落ち着かせようとしていた
「ワシらみたいな土地神は死活問題じゃい」
「ただでさえ最近は人々に畏れられなくなってきてるのに、どーなっちまうんですかい!!」
「なんのための奴良組ですかい、ヒィー」
阿鼻叫喚ね
『ハァ…』
思わずため息がこぼれる
ふと、桜の木の上を見ると牛頭丸と馬頭丸が笑いながら見物していた
確かあの二人は牛鬼のところの…
『あの二人は大丈夫そうね』
騒がず、それを笑えるくらいの余裕があるなんて…いい部下を持ってるのね、牛鬼は
『さて、どうしようかしら…』
この小妖怪たちの騒ぎを治めないと…組がばらばらになっちゃいそうだし…
木魚達磨は"奴良組を代理でしきる"なんて言い出すし
そのせいでおじいちゃんが不在だってことが小妖怪たちにはバレるし…
余計に混乱し始めていた
「妖…怪が!!おたおたすんじゃねー!!」
『ん?』
どうやら、リクオが叫んだらしい
小妖怪たちの動きが止まった
「人々から畏れられる、存在なんだろ?
じーちゃんはどーせ、どっかで遊んでるだけだ。
ハッキリしてんのは…敵が土足でボクらのシマをふみあらしてるってこと。」
「わ…若…?」
カラス天狗が少し動揺している
「入って来たんなら、退治する(おとしまえつける)だけだ。」
小妖怪たちのリクオを見る目が変わった
「達磨…てめーがしきんのは筋違いだ。
奴良組は今からボク(若頭)がしきる!!」