第7章 四国八十八鬼夜行
『総大将補佐…』
昨日の総会で突然任命された総大将補佐…
『ハァ…』
溜息が止まらない
「サクラ様」
『んー、どうしたの氷麗』
後ろを振り向けば雪女である氷麗が心配そうに私を見ていた
「その、溜息ばかりつかれるので心配で…」
『氷麗は…優しいなあ…』
私は氷麗の頭を撫でる
『大丈夫、ちょっと総大将補佐って役目に溜息ついてただけだから』
「あの、その…周りの、他の妖の反発など…気にされないでくださいね」
『大丈夫。反発なんてされた時には力ずくでも認めさせるわ』
そう、つい最近帰ってきたばかりで組の妖にも挨拶を済ませたとは言え、昔からいたメンバー以外はまだ私を疑っていた
一部の妖はお父さんから私のことを聞いていたのか、氷麗みたいにすんなりと受け入れてくれたけど…
いきなり帰ってきて総大将補佐ってなったら私でも疑うわ…
そんな事もあり、ずっと溜息が止まらなかった
氷麗に心配かけちゃったな
『氷麗、私は大丈夫。氷麗はリクオについておいてあげて。
狒々の件もあるし、一番はリクオを守ってあげないと』
「…リクオ様もですが、サクラ様も護衛されるべきです!!
後で私が…『大丈夫よ。』」
『私はリクオと違っていつでも戦えるから』
「サクラ様…何かあったら、すぐに呼んでくださいね。駆けつけますから!!」
『ありがとう、氷麗』
私がそう言うと氷麗はリクオの元へ向かっていった
昨日の夜、狒々とその組員が襲われてから本家はピリピリとしていた
狒々は一命を取り留めたが、もう歳だという理由で息子の猩影に組長の座を譲る気らしい
私もそれには同意していた
狒々には隠居してゆっくり過ごしてもらおうって思ってたしね
『…ちょっと散歩にでも行こうかな…』
そう思い、私は人間の姿に変化し洋服に着替えた
奴良家に戻ってきて、だいぶこの辺りの地理も覚えた
『今日はどこに行こうかな』
その時だった
目の前に突然現れた妖
『…夜雀…?』
「……」
夜雀はこちらを無言で見つめてくる
『どうしてここに…』
私がそう言うと夜雀が手紙を渡してきた
『?有行から…?』
周りに誰もいないことを確認して手紙を開いた