第4章 記憶
有行が提示した選択肢
それはどちらも御門院家側からは外れられない選択肢だった
それでも…
『…私は、弟に…会いたい』
「そっか、なら決まりだね。」
有行はそう言うと私に抱きついてきた
「いつでも辛くなったら戻っておいで。大丈夫、サクラならきっと…」
「サクラ」
『吉平さん…』
「お前の両親はもういない…だが、羽衣狐と同じように水木も復活を遂げようとしている。その時にお前は…」
『全部、わかってます。お母さんのあの時の言葉の意味も、私に自由はないことも…』
「直接、我々や晴明様に影響がなければ好きにするがいい。
羽衣狐に関しても…山ン本五郎左衛門に関してもな」
『ええ、羽衣狐は…晴明様も良くは思っていないのでしょうから』
「陰陽術も、畏に関しても…お前は十分強いはずだ。いずれ戻ってきた時、更に磨きがかかっていることを期待しておこう」
『吉平さん…ありがとう』
「さて、直ぐに送り出してあげたい所なんだけど…今戻ったら怪しまれるよね?」
有行がそう言ってきた
『…確かに、そうかもしれないわね』
「でも、外の世界の勉強も必要だから…少しの間、一人暮らししてみる?」
『一人暮らし…?』
「家賃も何も考えなくていいし、教養に関してはちゃんと学び終えてるけど…外の世界で暮らしたことは小さい頃しか無かったでしょ?」
『ええ』
「今は色んなものが溢れてる、便利にもなったしね。だから、勉強しておいで」
『でも、家賃とか…それ以外の生活費とか…負担なんじゃ…』
「安心して、御門院家お抱えの人にお願いするから」
有行はニコニコと笑っていた
『わあ…権力…』
「安心するといい、私からも伝えておこう。」
吉平さんも賛成なのね…
『わかりました、ご迷惑おかけしますが…よろしくお願いします。』
「サクラ、悪い男には気をつけるんだよ?」
『?何かあったら倒すから大丈夫、証拠も残さないわ』
「あまり無茶をしないようにな」
『はい、ありがとうございます』
その後、直ぐに吉平さんと有行が用意を整えてくれたらしく、一週間後には一人暮らしが開始していた