第3章 出会い
「サクラも大きくなったが…まだまだ子どもだな」
そう言いながら鯉伴はサクラの頭を撫でていた
そんな鯉伴の姿を見ながら水木は少し悲しそうな表情を浮かべていた
『ん…お母さん…?』
サクラが眠ってから数時間後、目を覚ましたサクラの隣では水木が荷物の整理をしていた
「あら、起きたのねサクラ」
『うん…お母さん、どこか行くの?』
「そうね…もうこれ以上は…ここには留まれないの」
水木の言っている事の意味がわからず首を傾げるサクラ
「サクラ、今から私とお出かけしない?」
『うん!』
サクラは嬉しそうに頷き、水木の手を握った
でも、まさかこの日が父である鯉伴に会える最後の日となるとはサクラも思っていなかった
『お母さん、今からどこに行くの?』
少しの荷物を持つ水木にサクラが尋ねた
「今から私の知り合いのところに行くのよ」
『知り合い?』
「お母さんの家族のところよ」
『!そうなんだ!』
水木とサクラが向かった先は葵城、陰陽師であり…安倍晴明の子孫である御門院家の本家だ
「おかえりなさいませ、水木様。」
そう言って出迎えたのは二代目当主である安倍吉平だった
「ただいま、吉平。変わりはなかったかしら」
「何も変わりなく。ところで…」
「ああ、この子は…」
吉平と水木の会話の内容もわからず、ただただ水木の手を握ることしか出来ないサクラ
吉平と水木が話を終えたようだ
「サクラ、しっかり吉平に鍛えてもらいなさい。そして…私の理想の…」
水木はそう言ってサクラの手を離し、先に葵城へと入っていく
サクラは吉平が抱きかかえていた
『お母さん…?』
何もわからず、理解することも出来ないまま…吉平に連れられ葵城の階段を上っていく
母の姿も、父の姿もそこには無かった
そしてサクラが眠りにつき、目覚めた頃には父と母の記憶は無かった…いや、無くされていた
一方その頃…
奴良組では水木とサクラが失踪したことで大騒ぎとなっていた
百鬼総出で二人を探すも、手掛かりはなかった
そしてそれから数十年が経った頃…鯉伴は山吹乙女と出会うことになる