第5章 いざ高専へ
あ? 俺がぼーっとしてる? 傑の目にはそう映るのか?
コイツは人の変化や状態によく気がつく。
例えば硝子のこと。
俺は毎日たいして変わらないように思うが「あまり寝ていないだろ? クマができてる」と声をかけていたり、「ほら、ついでに買ってきてやった」と絶妙のタイミングで缶コーヒーを差し入れたりして「ちょうど飲みたいと思ってたとこ、気が利くな夏油」と硝子から感謝の言葉をもらったりしてる。
「なんで硝子がコーヒー飲みたいってわかんの?」って尋ねたら「いつも硝子は一服した1時間後くらいにカフェインを欲しがるんだよ、見てればわかるだろ」だってよ。そういうところは素直にすげえと認めざるを得ない。
そんな傑が俺を見てぼーっとしてるって言うなら、そうなのかもしれない。別に夕凪のことを話すつもりはなかったが、聞いてみた。
「なぁ、携帯にさ呪力流して、壊しちゃったんだよね。それって謝るもん?」
「何言ってるんだ、悟、当然だろ」
「でも、壊した理由はいろいろあって――」
「謝るべきだ」
「2ヶ月以上経っててもか?」
「当たり前だろ。そんなに放置してたのかい? 早い方がいい。相手は怒ってるんだろ? 悟は関係を修復したいんだろ?」
「謝り方がわかんねぇ」
「君は今までどうやって生きてきたんだ?」
なんだかんだと傑に説教を受けて、俺はすぐさま夕凪に電話することになった。途中、テンパったけど、傑が後ろで、余計な事は喋らずさっさと言えと促してきて、無事になんとか謝れた。
おかげで夕凪とはそれから元通りになれたわけだし、傑は俺にとって親友ってことになんのか、これは。