第4章 抱擁
許した理由はもうひとつある。それはバリバリに画面が割れて復活出来ないと思っていた写真データが新機種に移行出来たから。
携帯の画面は割れていたけど、中のメモリーは無事で、新しい携帯にデータを移すと、悟くんとの2ショット写真も綺麗に表示された。あたしがそれを待ち受け画面に設定しているのは秘密だ。
そうやって悟くんは時々、ほんとに時々だけど、電話くれたりメールくれたりして、あたしたちは仲直りしていった。特にメールは、好きな時に送れるし、考えて書けるし、言いにくい事も言えてあたしたちに合ってたかもしれない。
頻出単語になっていた「使用人」も実はあれ、悟くんがそう思ってたわけじゃなくて、悟くんファンの対策のために言ったんだって! なにかの用事で最後にこうメールした時のことだ。
【無題】
……ってことでテスト頑張る。
使用人の夕凪でした。バイバイ( ; _ ; )/~
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【Re: 無題】
使用人とかいい加減やめろよ
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【Re: Re: 無題】
悟くんが言ったんじゃん!!!! Σ(-᷅_-᷄๑)
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【Re: Re: Re: 無題】
変なやつに絡まれてたからそう言っただけ。使用人なんて思ってねーわ!!!!!!!!!!気づけよ鈍感
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【Re: Re: Re: Re: 無題】
( ゚д゚)えええぇ
嘘!そうだったの?ごめん、全く気づかなかった。悟くんが名演技すぎて 笑
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【Re: Re: Re: Re: Re: 無題】
笑 じゃねーだろ。普通そこはさすが悟くんって褒め言葉を書くとこだろ。もう寝っから!じゃあな
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次に電話した時に「さすが悟くん、ありがとう」って言ったら悟くんは、今頃遅ぇーわって言いながらも嬉しそうにしてた。
ちなみに悟くんがお盆に帰ってくるっていう連絡がきたのもメール。この頃あたしはピコってメールのアイコンが画面表示されるのが楽しみで、笑顔で迎えるようになっていたかもしれない。