第4章 抱擁
高専に行く前は、あんなに悟くんの事を怒ってたのに、口も利かないほど喧嘩したのにどういう気分の変化? って思うよね。
ズバリ!
仲直りしてやりました。
それは、まだ梅雨に入る前だったから5月末だったかな? あたしの新しい携帯に一本の電話が鳴った。知らない番号からの着信だ。誰だろ? 恐る恐る電話を取るとそれはとっても聞き覚えのある声で。
「ゆうなぎー? オレー」
「さとる、く、ん?」
「おお」
悟くんとは写真の事で喧嘩したあの一件から一度も話をしていなかった。悟くんは高専の寮に入っちゃったから、話そうにも実質そんな機会はなかったしね。
この時――電話が鳴った時、あたしは決して悟くんの事を許していたわけではなかったんだけど、流れた月日は、幾分あたしの怒りを和らげていて、悟くんの声を聞くのは久しぶりで、そもそも悟くんと電話なんていうのが新鮮で、話してもいいかな、なんて心の応答ボタンをONにしてみた。