第3章 使用人
発表した後もずっと目で追ってしまう。卒業プロジェクトのメンバーと回の進行を手伝ってる。写真に写ってたあの野郎もそこにいた。
アイツはきっと夕凪の事が好きだ。見ればわかる。でも夕凪は……多分……通常運転。相変わらず俺には見せねえ楽しげな顔してるけど、それは別にそいつの事が特別だからってわけじゃない。
祝う会が終わって、夕凪が担当したっていうその笑顔の横断幕が飾られてる場所に足を運んでやった。数名で分担したって言ってたとおり確かに画風はバラバラだ。
一応見とくかー。
自分の名を探す。
見つけたとき思わず俺は笑った。ひょっとしたら笑い声が出てたかもしんねー。
「ぜんぜん笑顔じゃねーじゃん」
おかしくて何度見ても笑いが込み上げる。
横断幕の俺は、口をとがらせて不機嫌そうに睨んでる。ガラ悪すぎだろ、全然イケメンじゃねーし。これは間違いなく夕凪が描いたって確信がある。
あいつ卒業生全員の笑顔を描きましたって言ってたよな! さっきの言葉を思い出してまた可笑しくなる。
同級生たちの笑顔の中、俺だけはひでえ顔。それはきっと夕凪にとってはなんでもない日常の俺。
いつも俺ってこんな風にあいつの目に映ってたのか? もしそうだとしたら、いつもあんなにムスっとしてたのも俺に笑顔を向けなかったのもわかる気がする。
だけど夕凪は……それもまた幸せだという。笑顔以上の価値を感じているという。夕凪はそのなんでもない日常をこう言った。
――宝物。
俺が見ていた夕凪の顔も、全然笑顔は見せてくれねーけど、ブスだけど、そのなんでもない夕凪の日常は、俺にとって
――宝物。