第16章 ★ Sweet Memories
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あたしには、ひと月ほど前から取り組んでいる事がある。それは1000ピースのジグソーパズル。どうしても期限までに仕上げたいと、今、必死だ。
本当は悟くんと一緒に楽しむつもりで、これを用意したんだけど、1000ピースを舐めていた。一つのピースの小ささと、どれも同じに見える柄。そこに必要とされるのは、完成写真とパズルを細かく見比べる辛抱強さ。
それらを目の当たりにした時、これは悟くんのストレスを貯めるだけだと思った。
今、高専では異変が起きていて、呪詛師と通じてる内通者がいるかもしれないと極秘に彼から聞いた。ちょっと前には特級呪霊から奇襲も食らっている。悟くんには万全の体調でいてもらいたい。
――このパズルはあたしの力で完成させよう。
そう決めた。期限が迫っていて、猫の手も借りたいくらいなんだけど、使用人たちにこのパズルを手伝ってもらうのは違う気がする。彼女たちには本来の仕事がある。そうだ! あたしは猫の手ってところから、犬を連想し、玉犬へとたどり着いた。
「恵くんに少し手伝ってもらお」
恵くんも何かと忙しいだろうから、ほんとに空いた時間だけでいい。パズルそのものはそこまで苦にならなさそうなタイプだ。連絡してみると、恵くんは快くOKしてくれた。けど、気がかりな事が一つあるという。
「五条先生は俺と夕凪さんの関係を、誤解しかねないんで、そこだけですね」
「え? 結婚して子供だっているのにそんな事、思うかな」
「五条先生はそういう人ですよ」
ふぅとため息をついた。けど、恵くんにまでそんな事思うのなら尚更このパズルはあたしの気持ちとして完成させたい――大切な思い出。
彼が出張に行っている間、あたしは精力的にパズルを進めた。