第16章 ★ Sweet Memories
そんなこんなで、恵くんにはお礼が言いたく、リュックも早く返したかったのだが、なかなか機会がない。そこで、悟くんが恵くんに稽古をつけるっていうから、その帰りに五条家に寄ってもらうことにしたのだ。
恵くんは年の離れた弟みたいなものだ。
あたしは小さい時に父親を亡くして片親だったから、津美紀ちゃんと恵くんを見たときに、とても他人事とは思えなくて……。
あたしがこの子達の親代わりに愛情を注ぐんだ! なんて張り切っている部分もある。恵くんが五条家に寄ったあの日は、お母さんのように面倒を見てあげたつもり。
でもちょっとやりすぎたかな?
悟くんが駄々っ子みたいな拗ね顔した事に気付かなかったわけじゃないけど、彼は最愛の夫だ。夫婦になってそろそろ8年。ずっと一緒に暮らしてるんだし、大丈夫だよね。
あたしが恵くんに向けてる感情と悟くんに向けてるそれは全く違うって事くらいわかってるよね?