第16章 ★ Sweet Memories
「あたしが屋敷に持ち帰って蔵に閉じ込めとくね」
そう伊地知に告げると彼は安堵の顔を見せた。その直後、申し訳なさそうにハンカチで汗を拭うから、気にしないでと一言、付け加える。
ところがどっこい。このダルマ、ものすごく重たい。10キロくらいあるんじゃなかろうか?
そのダルマが入った袋と悟くんの私物と書類を手にあたしは、校舎から高専の門へと向かった。左右のバランスが悪いのか真っ直ぐ歩けなくて蛇行気味によろよろと歩く。真夏の太陽で体が溶けそう。
「夕凪さん、持ちましょうか?」
夏の日差しのジリジリした照り返しとは真逆の爽やかな声が背中から聞こえた。振り返るとそこに恵くんがいる。
大丈夫、ありがと、って言ったけど苦笑いが顔に出ちゃってたのかもしれない。恵くんは、そのダルマを、持ってたリュックの中に入れて背負った。
「どこまで運ぶんすか?」
「いいの? 授業あるんでしょ?」
「ちょうど任務に向かうところだったんで問題ないです」
「そう。じゃあ悪いけど、車を待たせてる高専の門のところまでお願い」
あたしが先導して歩くと、手に持ってた私物の野球道具の袋まで、サッと持って歩いてくれる。恵くんは、ダルマをおぶって手に荷物を抱えて、迎えの車まで運んでくれた。