第16章 ★ Sweet Memories
そして、帰宅。
くだらない上層部の保身の話し合いだったから、早々に断ち切って、僕が行くまでもないような廃墟ビルの下級呪霊はさくっと祓い、お土産に夕凪の大好きなチョコ入りの八ツ橋を購入して、予定より早く新幹線に乗れた。夕凪とゆっくりする時間が取れそうだ。
「これ好きなの! 悟くんありがとう」
「どういたしまして」
「一緒に食べよ。待ってて、お茶淹れてくるね」
なんて言ってお土産の八ツ橋を二人で食べるところを想像しながら五条の門をくぐる。
妻の名前を呼びながら上機嫌で屋敷の玄関から奥へ向かうと、「恵さんが来てますよ」と使用人が言う。
「え、また来てんの?」
「奥様が呼んだみたいです、昨日もいらしてたかと」
僕がいない間に何をやってるんだと小さく息を吐き、気もそぞろに二人がいるという和室に足を向けた。
「たっだいまー」
襖を開けて僕が目にしたのは――恵が畳に座り込んだ夕凪の右手首を取って、向かい合うように見つめ合ってるふたりの姿だった。
なーにやってんの。
◇