第16章 ★ Sweet Memories
さっきから、僕が目の前にいるのに、二人は仲良すぎじゃない? 時計をちらと見ると高専の寮の夕飯の時間が近づいていた。
「恵、そろそろ寮に戻んないと、飯の時間に――」
「ぁ、痛っ!」
僕の言葉を遮ったんじゃないかっていうようなタイミングで夕凪が声を上げる。久しぶりに裁縫をしたようで針で指を刺したみたいだ。左手の人差し指の腹から少し血が出てる。
傷口を手当てするから恵どいて、って立ち上がろうとすると、恵がすかさずリュックから絆創膏を取り出す。それを見た夕凪が、すっと人差し指を出したから、恵は怪我した箇所にくるっと手際良く、その絆創膏を巻いた。
「ありがとう、なんて用意がいいの」
「普段から怪我が絶えないとこにいるんで」
「そっか……うちの当主は全然怪我しないから。恵くん任務気をつけてね」
最強であるがゆえの弊害だ。次はわざと無下限を解いて怪我して帰ってこようと心に決める。いやでも、きっと言われるんだろうな。
「あたしが手当てするより、反転術式で治したほうが早いんじゃない?」って。
最強なんて損だよな。あぁーもう少し弱けりゃ僕も怪我して心配してもらえるのに、と思う。