第3章 使用人
その写真には、はちきれんばかりの笑顔を見せる夕凪と同じ学年と思われる男の姿が映ってる。頭を寄せてピースなんてしてやがる。その写真を夕凪に見えるように携帯を向ける。
「こいつと付き合ってんの?」
「付き合ってないよ」
は? 付き合ってないだと?
「なのにこんな顔すんのかよ」
この夕凪の隣にいる野郎は見覚えがある。何回か学校で夕凪と歩いてるのを見た。
俺が見る時いつも夕凪は笑顔で、ふたりだけの世界にいるような、眩しい光の中にいるような楽しそうな様子だった。
付き合ってないって事は夕凪の片想いなのか? 夕凪の心を奪っておいてこの男は見向きもしねーのか?
夕凪が俺じゃない奴と楽しそうに笑ってる。
俺には見せない顔で笑ってる。俺のいない世界で笑ってる。俺の知らない顔をきっとこの男は知ってる。
そう思ったら知らず知らずのうちに携帯を強く握っていた。負の感情が高まり、呪力をほんの少し握っている携帯に流しこんでしまってた。
夕凪がそれに気付き、めちゃくちゃ困った顔してる、と同時に悲しそうな顔……。
この男のせいでオマエはそんな顔をしてるの? こいつとの写真がそんなに大事なの?