第3章 使用人
……それなら。
携帯を持ってる夕凪の手首を引いてフローリングに腰を下ろし、足を開いて彼女を包むようにその間に座らせた。さっきのいい香りが鼻をくすぶる。
「じゃあ一緒に撮ろうぜ、ちゃんといい顔しろよ」
俺は右手を高く上げて、2人が入るように調整しながら撮影ボタンを押した。
カシャ
画面に俺と夕凪が写った画像が表示されて、保存ボタンを押す。写真を確認すると俺の中に夕凪がいて、ちょっとしたカップルみたいに見えないこともねぇ。
ガキの頃から一緒にいたけど俺の元にも夕凪の写真はほとんどない。こうやって2人で写真を撮ったのはすごく久しぶりな気がする。
にしても、なんだよ、この夕凪のかしこまった顔はよー。くくっ、こういう顔は嫌いじゃねーけど、俺はいつもの調子で夕凪をぶっさいくと揶揄する。
しばらくその写真を眺めていたがふと気になった。
こいつ、ほかにどんな写真撮ってんだろ?
夕凪は俺がお茶おかわりーって言ったから注ぎ足しに行ってる。
――ま、ちらっと見るくらい、いいだろ。
ピッ
ひとつ前の写真を見る。学校か? 体育祭の創作物だ。
ピッ
生徒会の部屋。先生たちが映ってる。
ピッピッ
続けて順に写真を見ていく。
ピッ
……そこで――俺の
手が止まった。
体内に巡る呪力の元になる負の感情が慌ただしく増量するのがわかった。一箇所に貯めるのは良くないので、体の循環を速めるよう努める。
胸がざらつくような、憤るような、焦るような、そして憎しみのような感情。
今までもこれと同じものを感じた事がないわけではない。だけどそれは微量なものですぐにまた平常に戻る。
だが、今回のそれは、負の感情は俺の中に竜巻のように急激に立ち上がりを見せそれが小さくなることはなかった。
一枚の写真が俺をそうさせた。