第16章 ★ Sweet Memories
そういえば、あたしはこれまで一度も悟くんにシてあげたことがない。いつもシてもらってばかりだ。悟くんの事、休ませるだけじゃなく、癒してあげるのが彼女だよね。
ご奉仕……してみよっかな。
そう思ったけど、急にそんなこと始めたら驚くだろうし、あたしもいきなり感が否めなくて気まずい。
そうだ、確か仮装衣装の中にあったはず。悟くん用に持ってきたコスプレ袋の中から、ごそごそとお目当ての服と小物を探し出す。あった!
今着ている魔女の衣装を脱ぎ、それらを手に取った。黒いミニワンピースを着て、白のニーハイを履く。ワンピの上にはフリル付きのエプロンをした。仕上げに頭にホワイトブリム――白いレースが盛られたカチューシャを付ける。
恥ずかしいけどこれは――メイド服。
これならハロウィンパーティの延長って事で、一応説明はつく。自然だよね。
そして……。
ゆっくりと眠っている悟くんへと近付く。
こういうの、ご奉仕プレイっていうのかな? 眠ってる悟くんのグラサンを、そうっと外して、テーブルの上に置いた。よほど、疲れてるのかそれでも起きてはこない。
こんなこと、したことないけど、でもいいよね? ううん、むしろ、時にはやるべきだ。彼女だもん。再び直哉さんの言葉が浮かんでくる。
「男いうんは、従順に奉仕してくれるのん見て、興奮すんねや。なんもせーへん彼女とか飽きるに決まってるやろ」
あたしは、なんもせーへん彼女になってる。
よし! やるっ。
勇気を出して、少しずつ顔を近づける。五条家の坊っちゃまは、眠っている顔も整いすぎるほど整ってる。
形のいいその唇に少しだけちゅっと触れてみた。でもまだ寝てるみたい。んじゃ、もう少し。
キスして少しだけ深く唇を密着させた。くちゅっと唇が合わさる音がする。
「ん、っ……んぅ」
気付いたみたい。声を漏らして、わずかに目が開いた彼と至近距離で目が合った。