第16章 ★ Sweet Memories
「尊、撮ってやるからそこに立ちなー」
家入先輩に言われて杖を持ってポーズを取る。あたしは結局、魔女の仮装にした。黒いローブを着て長い髪のウィッグを付け、三角帽子を被ってる。可愛く笑えと先輩が言うから、一応スマイルを作った。
「いいの撮れたな。五条に送信しとく」
家入先輩がメールしたみたい。そしてその直後にメールが届く。
――
ジャックオランタンじゃねぇじゃん。可愛くねぇ。
――
ひどい! メール見た瞬間、パチンって携帯閉じた。あんなデカイカボチャ被れって? やだよ。
悟くんは、めったに、可愛いなんて言ってくれないのは知ってる。それでも、仮装した時くらいは、なんか褒めてくれるかもって思って、あたしは、悟くんが喜びそうなコスプレを考えてた。
黒猫も好きそうかなって思ったけど、それはエロ扱いされて却下された。じゃあ、定番だけど、悟くんは、魔女宅のキキとか好きそうだからこの恰好なら可愛いって言ってくれるかなって魔女っ娘にした。
しかも、本当はミニスカと黒のハイソックスにしたかったけど、生足を見せるなって文句言われると思って、ロングドレスにしたんだからね。
だけど、全然いい言葉なんかくれない。
不満だ。
デート出来ない事も、可愛いって言ってもらえない事も、仮装パーティになかなか彼が来ない事も……。
そして――少しだけ寂しい。