第15章 エピローグ
「おじい様は、お父様よりかっこいいね。だって目隠しの最先端だったんだもん」
「桜、難しい言葉、知ってんじゃん」
「えへへ」
さっきミカさんから桜に渡されていた筒の中身は、あたしが描いたこのお父様の絵だったようだ。でも……。
「どうして。なんであたしの絵がここに? お父様の絵は、あの日、学校のゴミ箱に捨てたはず」
「僕のことなーめんなよ」
「え?」
いつもの余裕たっぷりの笑みを悟くんが見せる。
「あの日、夕凪の呪力がやたら気になってさ、教室見に行ったらちょうどオマエが飛び出してきて、見た事ないような顔してたんだよね」
多分、負の感情が膨れ上がったあたしは、うまく呪力をコントロール出来なかったんだろう。
見に来た悟くんは、その時、お父様の絵の事を近くにいた子に聞いて、学年が違うあたしの教室にわざわざ入って、ゴミ箱から絵を出して、持ち帰ったらしい。
「呪術師を全うしてさ、一般人を守って亡くなったのに、何にも知らない奴らに悪く言われて、それで夕凪が悲しくなるのはおかしいって子供ながらに思ったんだろうな。名誉回復していつかこの絵を渡そうと思ってたんだよね」
「悟くん……」
呪術師なんて仕事は、どれだけ一般人を守ったところでヒーローになんてなり得ない。目立たないところで人間社会を支える、そんなダークな仕事だ。だけど、悟くんはそんなお父様に対してあたしが胸をはれるようにしてくれた。
「ありがとう。悟くんのおかげで、お父様は……ヒーローになれた」
「お母様泣いてる、お父様」
「泣き虫だからねぇ、小さい時から」
大きな手で子供みたいに頭をなでなでされた。