第15章 エピローグ
授業の残り時間が15分となった時、ようやく、頭が教室の入り口につっかえるんじゃないかってくらいの、長身が現れた。
「五条さんのお父さんだ」
誰かが声をあげると、わーって教室が盛り上がる。
先生が静かに! って言うんだけど、そんな先生も悟くんが、アイマスクをずらして、会釈すると、きゅんって、ときめいた顔してる。顔面の持つ破壊力が半端ない。小声で悟くんに聞く。
「遅かったね」
「補助監督につかまっちゃってさ」
補助監督と聞いて少し心がざらつく。事情を聞きたかったけど、桜が音読を始めたから授業を参観した。授業が終わると桜が悟くんに駆け寄る。
「ねぇ絵を見て! 言ったとおりでしょ? お父様人気者なの」
「ナイスダディだから当然でしょ」
悟くんは桜から事前に絵の話を聞いていたみたい。また増えたよ、と桜が逐一、報告していたのは、アイマスクの数だったようだ。
あたしも悟くんの隣に立って、しばらく一緒に絵を眺める。見事なまでにアイマスク姿のお父さんたちが並んでる。
「なぁー」
「なに?」
「夕凪との約束はこれで果たせた?」
「ん? 約束」
隣を見上げると、目隠してるから、目は合ってるかわからないけど、柔らかく微笑む悟くんがいる。
「僕言ったよね、いつか泣かなくていいようにしてやるからって」
「……それって」
「オマエがくっらい顔して学校から帰って来た日。もう忘れた?」