第15章 エピローグ
――そして、授業参観当日。
参観は5限目にある。悟くんは、高専で授業があるから、少しだけ遅れると言う。桜が登校前に悟くんにしがみついた。
「なるべく早く来てね」
「わかってるよ」
約束の指切りをする。あたしは、少しでも早く行ってあげたくて、時間になると先に小学校に向かった。そして、1年生のクラスに入って驚く。桜が来て欲しいって言ってた理由はこれだったのか。
教室の後ろを見ると、「お父さん・おじいちゃんいつもありがとう」ってカラフルな文字が貼られていて、子供達が画用紙に描いたお父さん・おじいちゃんの顔がたくさん掲示されている。
だけど、見た瞬間、あたしは笑った。ほぼ、全員、お父さんの目が覆われているのだ。黒いアイマスクで。
「桜、これどういうこと?」
「うふふ、お父様だらけでしょ?」
悟くんは、春に行われた運動会の父兄参加プログラムで、綱引きでもリレーでも尋常じゃない活躍をして、桜のクラスで有名人になっていた。その時から子供達のヒーローになったみたいだ。
それで、みんなお父さんの顔を、悟くんみたいに、黒いアイマスクで塗りつぶしたんだと桜が教えてくれる。
そうこうしているうちにチャイムが鳴り、授業参観の5限目が始まった。だけど、悟くんはまだ来ていない。
授業時間が半分を過ぎても、それは変わらなかった。
桜もちらちら後ろを気にしてる。スマホに何か連絡が来てるかと思い、見てみるけど何もない。
寝室で電話していた内容を思い出す。浮気してたらどうしよう。猫可愛がりしている桜よりも優先するならよっぽどだ。