第15章 エピローグ
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それから少し日が経った五条家の食卓でのこと。夕飯が終わると、桜が飛び乗るようにして、悟くんの膝の上に座る。
「お父様、あのね、ふふ」
「んー? なにー」
そっと悟くんに耳打ちしてる。こそこそ話をするのが、今の桜のブームみたいだ。
あたしが言うのもなんだけど、桜はフランス人形みたいに可愛らしい。宝は目の色や頬のあたりは、あたし似だけど、桜は目の色も髪も何もかも悟くん似。
そんな桜が、悟くんの膝から飛び降りて、嬉しそうに、あたしの方に駆け寄ってくる。
「お母様、今度の授業参観、お父様も来てくれるって!」
「そうなの」
「うん。絶対二人で見に来てね」
授業参観を楽しみにしているようで、桜はその日から毎日、カレンダーの日付に✖️印をつけていった。悟くんには「また増えたの」って何かこそこそ、日々報告してる。
悟くんは息子たちともよく一緒に時間を過ごしていて「手加減しないからなー」ってムキになってゲームしてる姿を見ていると、浮気なんて無縁みたいで、いつの間にか、頭の中からそれはすっかり抜け落ちてた。
――だけど、浮気は続いてたみたいだ。