第15章 エピローグ
◇
「今日からこれに変えるね」
ある朝、いつものように、出校する身支度を手伝っていると、悟くんはサングラスから黒のアイマスクへと付け替えた。これまでは、目を覆うのに包帯を使っていたのに、急に目隠しを変えた。
どうしたの? ってあたしの顔に書いてあったのかな。尋ねる前に、悟くんがあたしに向かって一言、言う。
「僕なりのリスペクト」
その言葉は随分と前に耳にした。お父様に婚約の報告をしに、お墓参りに行った帰り、彼がぽろっと口にした言葉だ。あれからもう8年も経ったのかと思うと、過ぎた年月にも驚く。
鏡を見ながら、なかなかいいじゃんって自分の姿にテンションあがってる悟くんは今、28歳だ。――そう、悟くんは28歳になった。
それはお父様が呪霊に殺されて、この世を去った年齢。お父様は生前、黒い布で目を覆っていた。
「夕凪のお父さんが生きれなかったその先は僕が引き継ぐよ」なんてかっこいい事は言ってないけど、8年もの間、リスペクトの気持ちを忘れずにいたって事は、きっとそれに近い思いなんだろう。
お父様をリスペクトしてるって事は、あたしと出会えた事を今も大切に思ってくれてるって事だ。
浮気……か。
恵くんが言うようにあたしの勘違いかもしれない。