第14章 過去
「悟くんは最弱にはならないよ。だってあたしはもう、とっくに悟くんだけのものだから。どこにも行ったりしない。あたしを幸せに出来るのは……世界でただひとり、五条悟しかいないの。宝とあたしと一緒に幸せになろ。よろしくお願いします」
ソメイヨシノの桜吹雪が頭上を舞って、悟くんの白い髪に数枚、花びらが舞い降りた。
手を伸ばすと彼が屈んだので、花びらを取ってあげる。穏やかに笑う悟くんを見て、来年も再来年もずっと一緒にいようと誓う。
エンゲージリングのダイヤがキラッと美しく光った。
「ねぇ、どうしてプロポーズしてくれたの? 言わなくてもあたしはきっと、このまま婚約者から悟くんの妻になるのに」
「そうなんだろうけど、こういうのって一生の思い出じゃねーの? 言ってほしいもんなんじゃねーの?」
「それって……あたしの一生の思い出のためにプロポーズしてくれたってこと?」
悟くんは、遺言に同意したからプロポーズはされてないとか、そんなの寂しすぎるだろうって言う。普通の恋人が結婚する時にはプロポーズするんだろうから、僕も言葉で伝えねーとなって。
「夕凪はそういうの大事にしそうだし」
「ありがとう。すごく嬉しい」
正直、たくさんの言葉をもらってどれがもうプロポーズかわからないけど、それも含めて思い出だ。
悟くんが懸命にプロポーズを考えてたこと想像したら、ちょっと可笑しくて、それだけで愛されてるなって思う。