第3章 使用人
夕凪がおかしい。
俺に彼女が出来て、自分の側にいる男はいかにナイスガイかって再認識して少し動揺の顔でも見せるかと思ったが、逆にすげえ明るい顔することが増えた。いきいきしてる。
そん時付き合ってた彼女と学校の渡り廊下を歩いてた時だ。前から女同士が話しをしながら歩いてくる。そのうちのひとりが気になった。目を垂らして口角あげて顔全体で笑ってる。
くすくすって時々肩をすくめて隣の女に笑うその雰囲気がなんつーかこっちまで心が弾むような感じで……時々相槌うったりびっくりしたみたいな顔して話しながら、こちらに近づいてきてる。俺はこんな子、学内にいたんだ、知らなかったなぁなんて思いながら、自分の彼女が隣にいる事も忘れてその子を目で追う。
すれ違いざまにその子がちらとこちらを見た。
? あ、やっぱ、イケメンだから見ちゃうよな。だよなぁ。
でも、その子はそういう理由から俺を見たわけではなかった。顔見知りだったからだ。
それは――
夕凪だった。
嘘だろ? 俺は後ろを振り返る。高い位置で一つに結ばれた髪を左右に揺らしながら遠ざかっていってる。いつも見てる姿。後ろ姿は間違いなく夕凪だ。
あいつ、あんな顔してた? あんなに笑うの?