第14章 過去
お墓に仏花をお供えてして、お線香をあげて、手を合わせる。「じゃあ、ちゃんと挨拶すっか」って言って悟くんが腰を上げた。お墓の前に立つ。
「えー、夕凪の事は、僕に任せてください。まぁ、こんな僕なんで、いろいろ夕凪を怒らせたり、困らせたりはするだろうけど、ずっと夕凪を側に置いて夕凪だけを愛しますから、安心してお父さんは安らかに眠ってください」
「お父様、五条家を頼るよう言い残してくださってありがとうございました。おかげで生涯、愛を誓える人と出会えました。悟くんと幸せになります」
お墓の前のローソクの火がゆらゆらと少し揺れたような気がした。
「なぁー」
「なに?」
「オマエのお父様が亡くなったのって、確か28の時だっけ?」
「うん、あたしが1歳だからそうだね、お父様は享年28才」
「そか」
「うん。なんで?」
「いや、夕凪の父親あってこその、今の僕たちだから、僕なりのリスペクトを捧げたいなと」
何か思った事があるみたいだったけど、悟くんはそれについて、それ以上深く口にする事はなく、あたし達は五条のお屋敷へと戻った。