第14章 過去
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後日、お父様のお墓参りに行きたいという悟くんに同行することになった。悟くんがお父様に会いに行くのは初めてだ。
お父様の遺体は骨も何も残らなかったから、現場に残されていた服や時計など、遺品を一部、土に埋めてお墓を建てている。
「夕凪と一緒に会いに行くから待っててって、ずっとおとーさまに言ってたんだよね。次は宝も連れてこねーとな」
「そうだね、見せに来ないとね」
宝はお昼寝中だったし、お墓は関東の外れにあって遠いから、今回は置いてきた。あたしは、お墓の前に立って超真面目モードに入る。
「お父様、あたしの婚約者を連れてきました。初めましてじゃないんですよね。お父様が悟くんに会ってたなんてびっくり」
「二度目ましてーでいいかな。おい、睨むなよ夕凪……あーえと、五条です。赤ん坊の頃、お会いした悟です」
もしお父様が生きてらしたら、なんだそのフラフラした挨拶はって思うかな? でも、この人が、お父様がよろしくと託した五条家のお坊っちゃんです。
「僕なら夕凪を幸せにするってそう思ったんですよね? さすがお目が高い」
「そんな話あった? 適当にすり替えないで。悟くん、今日は真面目にやる日だから。ちゃんとお父様に挨拶して」
「真面目にやってるだろーが。オマエのお父様は喜んでるだろ。夕凪はいい男、連れてきたなって」
「その自信はどっからくる?」
「オマエの事、誰よりも愛してるっていうところから」
何も言えなくなるから悔しい。愛してるとか、そんな直球なワードは高専に入りたての頃は、ほとんど言わなかったのに、最近はぽんぽん口に出す。
「もう二度と失いたくないから言うんだよ」って言うけど、まだあたしは気恥ずかしくて、そんな悟くんに少し遅れを取ってる。