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【呪術廻戦】-5歳で五条家に来ました-

第14章 過去


 見るといつも牡丹のような愛らしい笑顔で微笑みを浮かべている奥様が、ハンカチで軽く目頭を押さえてらっしゃる。

「あの方は五条家の事をそこまで信用してくれてたんですか」

 あの方……奥様がつぶやいたその言葉にあたしとお母様は同時に「あの」と声を発した。お母様と顔を見合わせ、頷いて、お母様に言葉を託す。

「奥様は主人をご存知だったんですか?」

「ご存知、と言われるほどではないわ。お会いしたのは一度だけですから。だけど、悟、あなたも実は会ったことがあるのよ、なぎちゃんのお父様に」

「あ? 僕が?」

「全く覚えてないでしょうけどね」





 奥様が記憶を手繰り寄せるように話を始められた。それは、悟くんが爆誕して半年が過ぎた頃の事だと言う。

 ちょうど梅雨が開けて、眩しい太陽の光が大地を照らすようになった7月の中旬。五条家で悟くん生誕のお披露目会が行われた。

 その日は、親戚だけでなく、御三家、術師家系の名家、さらには、近年、呪霊の討伐に大きな成果を上げている呪術師が招かれて、あたしのお父様はその枠で五条家に招待されたらしい。

 招かれたと言ってもお父様は五条家に特に親しい人がいるわけではない。その場で一言、二言、話をし、悟くんの誕生を祝い、今後の呪術界を共に担っていこうというようなそんな挨拶を、列を成した招待客の後尾に並んで、順を待って取り行うだけだ。


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